厚生労働省が葉酸サプリを推奨する理由

厚労省が発表した報告書「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」について紹介します。

 

厚生労働省のHPのどこにある?

 

葉酸サプリに関するいろいろなサイトやブログ、販売会社のHPを見ると、

 

「葉酸は1日400μg摂取しましょう」

と書いてあります。

 

もう少し詳しく解説しているところだと

 

「1日400μgのモノグルタミン酸型の葉酸サプリで摂取しましょう」
と書いているところもあります。

 

最近の葉酸サプリは「合成葉酸」と「天然葉酸」に分かれ、お互いにアピール合戦を繰り広げています。その根拠はどこにあるのでしょうか?

 

実は日本の厚生労働省が識者を集めて検討し、正しい情報を啓蒙するように推奨しているのです。

 

厚生労働省には外部に公開した報道資料を年月ごとに分類しているのですが、
2006年2月1日に「「妊産婦のための食生活指針」の策定について」発表しています。

 

「妊産婦のための食生活指針」の策定について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/

 

これをクリックすると以下のような画面になります。

 

「妊産婦のための食生活指針」の策定について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3.html

 

「妊産婦のための食生活指針」(「健やか親子21」推進検討会報告書)の部分をクリックすると以下のページに。

 

 

「妊産婦のための食生活指針」(「健やか親子21」推進検討会報告書)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html

 

3 「妊産婦のための食生活指針」について
→(3)「妊産婦のための食事バランスガイド」の活用の基本的考え方

 

この中の参考資料3に

 

「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」というレポートがあります。

 

 

この報告書の概要は?

 

上記をクリックすると以下のようなページが表れます。

 

神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf

 

 

これによると厚生労働省の児童家庭局母子保健課という部署が関係する専門家を招き、検討会を設置して取りまとめられました。この資料に基づいた方策を保健医療関係者に広く周知するように指導しています。

 

この件は日本医師会、日本産婦人科科学会、日本助産婦会、日本看護協会、日本薬剤師会などにも周知徹底するようにされているため、事実上、この資料が日本の葉酸サプリの基準になっています。

 

特に関係があるのは資料の3ページ目にある、「第5 保健医療関係者の情報提供のあり方について」の項目「イ」です。

 

第5 保健医療関係者の情報提供のあり方について

 

1日に野菜を350g摂取すれば1日400μgの葉酸の摂取は可能ですが、食事由来の葉酸(ポリグルタミン酸型の葉酸)は利用効率が確定していない(25%〜81%の間と言われている)ため、個人の食生活によっては400μgの摂取が困難になること。

 

またアメリカの最新の報告では神経管閉鎖障害の発症リスク低減については1日400μgの葉酸摂取で効果が期待できること。

 

それらを踏まえて、厚生労働省としては「食品からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mg(注:400μg)の葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが集団としてみた場合に低減することが期待できる旨、情報提供を行うこと」と指針が示されています。

 

この部分が「1日に葉酸400μgが必要」の根拠です。

 

ただし「食品からの葉酸」と「いわゆる栄養補助食品」と、少しぼかした言い方をしてますよね?これについては後述の部分ではっきりと言葉の定義が示されています。

 

「食品からの葉酸」と「いわゆる栄養補助食品」

 

次の「第6 葉酸摂取の際の留意事項について」の「2 摂取量及び摂取方法について」の項目「イ 利用効率について」の部分です。

 

抜粋すると「食品中の葉酸(folate)いわゆる栄養補助食品中の葉酸(folic acid)の体内の利用効率について差がある。」と、英語名で書かれています。

 

アメリカでは明確に区別がされていて、

 

食品中の葉酸(folate)=ポリグルタミン酸型の葉酸、いわゆる天然葉酸
栄養補助食品中の葉酸(folic acid)=モノグルタミン酸型の葉酸、いわゆる合成葉酸

 

というふうに定義されています。2つ葉酸には利用効率に明確な差があります

 

「いわゆる栄養補助食品の葉酸は生体内の利用効率が85%と見積もられているのに対して、食品中の葉酸は代謝過程に様々な段階があるため、利用効率が低下する。幾つかの研究では、食品中の葉酸の利用効率は50%程度と見積もられている」

 

つまり、

 

食品中の葉酸=50%
栄養補助食品中の葉酸=85%

 

食品中の葉酸については25%から81%の間という報告もあり、分子が不安定なため利用効率も一定ではないようです。合成葉酸の場合、食事と一緒に摂取した場合は85%、単体で摂取した場合は100%の吸収率という報告があります。それもあって、厚生労働省は栄養補助食品での摂取を勧めているのです。

 

そしてもう一つ見逃せない事実がこちら

 

見逃せない事実

 

これによると

 

・示されている疫学研究の全てにおいていわゆる栄養補助食品が使用されている
食品中の葉酸(folate)についても理論的には効果があると推定されるが現時点では証拠が得られていないこと
・諸外国がいわゆる栄養補助食品を利用している

 

これらを踏まえて日本では「いわゆる栄養補助食品」を活用していこうという方針になっているようです。
天然葉酸はたしかに体に良さそうだけど、きちんと証明されたわけではないんですね。ちょっと意外でした。

 

 

上記の内容をまとめると、厚生労働省が推奨しているのは

 

1日400μgの葉酸をモノグルタミン酸型の栄養補助食品(つまり葉酸サプリ)で摂取すること。

 

 

この辺の事実は葉酸サプリを作ってる販売会社の中にも誤解している会社があるくらい、ややこしいです。
もし余裕のある方は厚生労働省の資料をきちんと読み込んでみてください。

 

 

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